静けさや鼓膜にしみいる電子の声。
今年もグレゴリオ暦356.2422日が終わりに近づいてきた。大晦日の夜、社内は人が減り静けさが深まり、いよいよ新しい年を迎える雰囲気になってきた。
外から煩悩を取り払う除夜の鐘が聞こえて来るかなと思い、耳を澄ますと何か音がする。決して除夜の鐘を打ち消す邪念の音ではなない。何のことはない。暖房のファンの音だ。試しに暖房の電源を切ってみる。まだ、音がする。今度は換気扇の音だ。換気扇のスイッチをオフにしてみた。んっ?まだ、音がする。こうなったら徹底的に音を消してみよう。耳をそばだてるとどうやらパソコンのファンの音だ。パソコンの電源オプションで省電力モードにしてファンを止めた。今度は、蛍光灯から音がする。最近の蛍光灯はインバーター方式で直流だから50Hzの音は聞こえないのではなかったのか。蛍光灯も切り、これで完璧と思ったら、今度は、外の自動車の音や風の音がする。その傍らでパソコンからも音がする。パソコンにはHDD(Hard Disk Drive)の代わりにSSD(Solid State Drive)という半導体だけで構成された記憶装置を入れているのでHDDの音がしないはずなのに・・・。試しにディスク内で大きな1GBのファイルをコピーしてみた。するとやはり、音がする。おぉ、これは正しく電子が半導体や導体内で原子に当たる音。電子の声である。そう言えば、昔、8ビットパソコンでも同じような事があった。8ビットの頃は高周波の波長が処理の内容により変化して、音を聞くとデータをメモリに読み出しているのか、グラフィックに書き出しているのか分かったが、現在のパソコンの音は周波数が高くてモーターの小さな音にも聞こえる。その内、省電力モードで動作を抑えられていた熱に耐えられずにCPUファンが回り始め、静寂の中の電子の声を掻き消した。これでは、遠巻きに聞こえるであろう除夜の鐘どころではない。鞄の中に入れてあったウレタン製の耳栓をしてみた。そもそもこれでは除夜の鐘すら聞こえないが・・・。耳栓をして暫くすると妙な雑音がする。サー。ホラ貝を耳にあてたのと似た音だ。恐らく耳の中で血管の血流音がこだましているのだろう。耳栓をしてもノイズがつきまとうとは、呪われた気分となる。聴覚のスイッチがあれば良いのだが・・・。耳栓を取ると、また、パソコンのファンの音がする。こうなったら、ファンレスのシンクライアントが欲しい。。。最近、シンクライアントは安いし、企業でも導入が増えて来た。とめどなく考えていたら空調暖房を切ったせいか、寒さがしみてきた。シンクライアントが欲しいわ、寒さに苦を覚えるわ、煩悩は108+2になってしまった。2回多く、鐘を突かねば・・・。